芥川賞作家である小川洋子さんの書いたこの「博士の愛した数式」は 映画にもなりましたので、ご存じの方も多いと思います。
「80分しか記憶がもたない」数学者とその家政婦そして家政婦の息子 である「ルート(√)」の触れ合いの物語です。
博士は10歳の家政婦の息子に「ルート」と名付け、いきなり「ルート・マイナス1」 の話をします。
平方根を習ったばかりの中学3年生に、この意味がわかるでしょうか。
「√4」は2乗したら4になる数ということで、2のことですね。
では「√2」はどうですか。
(1.41421356・・・)「一夜一夜に人見頃」と覚えました。
でもこの「・・・」はどこまで いっても限りがありません。
そう「円周率 パイ」と似ていますね。
円周率は(3.1415926535・・・)。あなたは何ケタまで言えますか?
こういう数字を「無理数」と呼びます。分数で表わすのが無理だから「無理数」ですね。
では、「√−1」は? 2乗したら「−1」になる数?
物語の「ルート」は少し考えて、「そんな数はないのじゃないでしょうか。」と答えます。
高校生なら存在していると分かりますよね。「虚数 i」です。
2乗したらマイナスになる数を「i」と名付け 実数と合わせて「複素数」と言います。
虚数iはimajinary number(想像上の数)のことです。
これにより、「数直線」が「数平面」まで、数字の範囲が飛躍的に増えるのです。
ちなみに私はこれを習った時、ものすごく感激しました。
中1で「方程式」を習った 時以来の知的経験でした。
博士は「ルート」を「なかなか賢い心が詰まっていそうだ」と言いますが、
私も「賢い心が詰まっていそうな」生徒には、「ルート」を教える時に この「虚数」の話もします。
理解できた生徒は、きっと数学が好きになります。
まだまだ、この「博士の愛した数式」には面白い話がありますので、 少しずつ紹介していきたいと思います。