塾で教える日本の歴史 ⑨ 神話の誕生(古事記・日本書紀)
今ほとんどのテキストでは、日本の神話は教えていません。
国語の文学史の中で記紀について少し触れる程度です。
では小中学生がどこで「日本の神話」に触れるかというと、その機会はほとんどないのだと思います。
私の子供の頃は手塚治虫の「火の鳥」を読んだり、神話の映画を学校で見たりしたものです。
神話を知らない民族は滅びるといいます。
そこで神話が誕生したであろうこの律令国家誕生時期に神話について触れることにしましょう。
「イザナギ・イザナミ」「天照大神」「スサノウのミコト」「ヤマトタケル」などの日本の英雄たちを紹介していきます。
・古事記は712年完成
「古事記には、うそは書か ないつ(712) もりです」
天武天皇の意思に発し、稗田阿礼が暗唱していたものを、漢字だけを使って太安万侶が筆録しました。
神話と神武天皇から推古天皇までの天皇家の系譜を整理した最古の書物です。
・日本書紀は720年成立
「何を(720年)書こうか? 日本書紀」
最初の正史で舎人親王が編纂。漢文体で神話と神武天皇から持統天皇までが編年体で書かれました。
ここでは古事記の神話編を紹介します。
イザナキ・イザナミ
混沌から天地がわかれ、神々の地を「高天原」といいました。
最初に「天の御中主の神(アメノミナカヌシノカミ)」など「別天つ神」と呼ばる神々が出現されます。
その後ご夫婦の神々が出現され、最後に現れた男女の神が「伊耶那岐命(イザナキノミコト)」と「伊耶那美命(イザナミノミコト)」です。
イザナキとイザナミは苦労して淡路島始め日本の島々を生み、海の神・山の神・穀物の神など様々な神を生みますが、火の神を生んだことでイザナミは死んでしまいます。イザナキは出雲にあるという「死者の住む黄泉の国」にイザナミを取り返しに行きますが、叶わず戻り九州の日向の地で禊(みそぎ)をされます。
アマテラスとスサノオ
禊(みそぎ)を済ませたイザナキはその後も様々な神を生みますが、最後に尊い三柱(神様は柱と数えます)を生み国造りを完成させます。すなわち、高天原を支配する「アマテラス大御神」・夜の国を支配する「ツクヨミ神」・海を支配する「スサノオ神」です。
このうち「スサノオ神」は乱暴者で父イザナキより追放され、姉の住む高天原でも乱暴を働きます。恐ろしいと思った「アマテラス大御神」は「天の岩屋」の戸を開いて隠れてしまいました。これにより高天原も地上も暗くなり、困った八百万の神々の中からアメノウズメが歌い踊り、その楽しそうな様子からアマテラスも出てきました。
このエピソードは「日食」を彷彿とさせますね。アマテラスは太陽神ですしね。
ヤマタノオロチ
スサノオは高天原を追い出され、出雲に着き、そこで八つの頭を持つ「ヤマタノオロチ」を退治し、「草なぎの剣」を得てアマテラスに差し出しました。
この辺りまるでロールプレイングゲームのようです。ドラクエみたいですね。
大国主命と国譲り
さてスサノオの子孫に「大国主命」がいます。その大国主命には「イナバノシロウサギ」を助けるという物語が残っています。
大国主命はスサノオの後「スクナビコナ神」と協力して「葦原中国(日本のこと)」を造り上げます。
しかしアマテラス大御神より遣わされたタケミカヅチ神の要請により「葦原中国」をアマテラスに譲渡し、自分は幽冥界の主となりました。
国譲りは簡単にはいかなかったでしょうね。
天孫降臨
アマテラス大御神は孫の「ニニギノミコト」を地上におろし、葦原中国を任せました。
この時にアマテラスはニニギニミコトに三種の神器を授けます。すなわち「ヤタの鏡」「ヤサカニの勾玉「草薙の剣」です。この三種の神器は歴代天皇が継承していると伝えられています。
海彦山彦
ニニギノミコトはコノハナサクヤヒメ(きれいな名前ですね)と結婚して、子を産みます。
兄の海彦、弟の山彦の物語が残っています。弟の山彦が神武天皇の直接の祖先です。
聖書にも「カインとアベルという兄弟の確執の話がありますね。
神武天皇の東征
ニニギノミコト以下3代を「日向3代」といい、次に「カムヤマトイワレヒコ」が誕生し、日本の中心である「大和」を目指して東征します。
カムヤマトイワレヒコは熊野の地から「八咫烏」に導かれて大和を平定し、そこで即位し初代天皇「神武天皇」となりました。
九州から大和への東征、何らかの歴史的事件が背景にありそうです。
ヤマトタケル
12代景行天皇の子である「日本武尊(ヤマトタケル)」は父より命じられて、熊襲や東国等全国を平定してまわります。
「草薙の剣(天叢雲の剣ともいう)」を片手に全国を駆け回ったヤマトタケルの足跡は多くの場所に残されています。
最後は現在の三重県で力尽き、白鳥になって飛んで行ったという美しくも悲しい伝説が残されています。
日本の神話は、紹介してきたように「ギリシャ神話」や世界各地の神話に劣らない壮大な物語です。
人間味あふれる神様が、悩み、失敗し、イキイキと活躍しているのが特徴ではないでしょうか。
「ロードオブザリング」などを凌ぐ大長編映画になると思いますよ。
実在の卑弥呼がアマテラスと同一人物なのかどうか、天皇家の祖先はなぜ女性神なのでしょうか?
なぜ子ではなく天孫が降臨したのでしょうか、興味はつきません。
成立当時の皇位継承を調べてみるのも面白いですね。
本を買いあさり、文献を調べだすと立派な古代史マニアです。
矢頭嘉樹